小陰唇が片方だけ腫れる症状は、多くの女性が経験する悩みの一つです。原因は感染症や炎症、外傷、あるいは小陰唇の異常などさまざまですが、放置すると症状が悪化する可能性もあります。
この記事では、小陰唇の片側だけが腫れる原因や考えられる病気、適切な対処法について詳しく解説します。早期発見・治療が重要なため、異変を感じたら医師に相談することをおすすめします。安心して日常生活を送るためのポイントも紹介しているので、ぜひ参考にしてください。
監修医師プロフィール
サイトリ杉山美容クリニック
院長/医師 櫻井 夏子
経歴
2015年 順天堂医学部付属順天堂医院 初期臨床研修
2017年 順天堂医学部付属順天堂医院 整形外科入局
2020年 某大手美容クリニック 入職
2021年 某大手美容クリニック 副院長就任
2022年 NEXUSクリニック 入職
2024年 サイトリ杉山美容クリニック 院長就任
所属学会
美容外科学会(JSAS)
美容皮膚科学会
抗加齢医学会
小陰唇が片方だけ腫れる原因となる疾病
小陰唇が片方だけ腫れる原因には、バルトリン腺炎、接触性皮膚炎、毛嚢炎、性器ヘルペス、外陰炎などがあります。これらは感染や炎症によって腫れや痛みを引き起こし、放置すると悪化することもあります。
早期の診断と適切な治療が重要です。小陰唇が片方だけ腫れる原因となる疾病は以下が挙げられます。
- バルトリン腺炎
- 接触性皮膚炎
- 毛嚢炎
- 性器ヘルペス
- 外陰炎
それぞれ見ていきましょう。
バルトリン腺炎
バルトリン腺は左右に一つずつある分泌腺で、性交時に膣を潤す潤滑液を分泌する役割があります。細菌感染により炎症が起こり、主な原因菌はブドウ球菌、連鎖球菌、大腸菌などです。
感染が進むと腺の開口部が炎症で塞がれ、分泌物が溜まりやすくなります。その結果、膿がたまってバルトリン腺膿瘍という状態になります。症状には腫れや痛み、発熱があり、放置すると悪化する可能性があります。抗生物質の投与や膿の排出など適切な治療が必要です。早めの受診が望まれます。
接触性皮膚炎
接触性皮膚炎は、刺激物質や物理的な刺激によって皮膚に炎症が起こる湿疹性の皮膚炎で、小陰唇にもよく見られます。原因は汗、膣分泌物、石鹸、尿、入浴剤、硬水、脱毛クリームなどの化学的刺激に加え、ナプキンや下着の擦れといった物理的刺激もあります。これらが皮膚に繰り返し接触することで、かゆみや赤み、腫れといった不快な症状を引き起こします。
治療ではまず原因と考えられる物質との接触を避け、ステロイドの外用薬や保湿剤で炎症を抑えるのが基本です。症状が重い場合には、内服治療を併用することもあります。
毛嚢炎
毛嚢炎は、毛穴の奥にある毛根を包む毛嚢(毛包)が細菌や刺激で炎症を起こした状態です。見た目はニキビのように赤く腫れ、膿をもつこともあります。毛穴が傷ついた際に発症しやすく、特に脱毛後や自己処理による肌のダメージが原因となることが多いです。
炎症部位は痛みやかゆみを伴うことがあり、放置すると悪化する可能性もあります。治療は、清潔を保ちつつ抗菌薬の外用や、必要に応じて内服治療が行われます。早めの対応が大切です。
性器ヘルペス
性器ヘルペスは、単純ヘルペスウイルス1型または2型が性器に感染して起こるウイルス性疾患です。主な症状には、痛みを伴う水ぶくれや潰瘍、排尿時の残尿感、神経痛などがあり、症状は重くなることもあります。
特徴的なのは再発の多さで、一度症状が改善しても、体調不良や疲労時に再発しやすい点です。ウイルスは体内に潜伏し続け、完全な治癒が難しいため、症状の管理と再発予防が重要となります。治療には抗ウイルス薬が用いられ、症状の軽減と再発頻度の抑制を目指します。
外陰炎
感染性の外陰炎では、皮膚の下で炎症が起こり、小陰唇が片方だけ腫れることがあります。原因としては、カンジダや真菌、大腸菌などの細菌、トリコモナスやケジラミなどの寄生虫、またヘルペスなどのウイルスが挙げられます。一方、非感染性の外陰炎は、皮膚に刺激が加わることで発症し、感染がないため微生物は関与しません。
感染性の場合は、原因の微生物に効果的な抗菌薬や抗真菌薬などの外用薬が処方されます。非感染性の場合は、刺激物を避けつつ、かゆみや炎症があれば外用薬で症状を和らげます。どちらも適切な診断と治療が重要です。
【デリケートゾーンの疾病以外】小陰唇が片方だけ腫れる原因
小陰唇が片側だけ腫れる場合、デリケートゾーン特有の疾患以外にもさまざまな原因が考えられます。考えられる主な原因は以下の通りです。
- 腎不全・心不全
- 妊娠中
それぞれ見ていきましょう。
腎不全・心不全
腎不全や心不全などの全身性疾患は、体内の水分バランスが崩れることで全身にむくみを引き起こし、小陰唇も例外ではありません。通常は痛みやかゆみを伴いませんが、小陰唇同士が擦れたり、長時間の圧迫を受けることで潰瘍が生じることがあります。
特に座位が長時間続いた場合や、締め付けの強い下着を着用している場合に悪化しやすくなります。なお、男性の場合も同様に陰茎が腫れたり痛んだりすることがあります。
妊娠中
妊娠中は子宮や陰部への血流が増えるため、小陰唇が一時的に膨張し、片側だけ腫れて見えることがあります。これは通常、痛みやかゆみを伴わない自然な変化です。
また、妊娠によって下半身の血流が滞りやすくなることで、静脈瘤ができることもあります。静脈瘤が陰部に現れると、小陰唇やその周囲がふくらんで見える原因になります。
片方だけ小陰唇が腫れた場合に起こり得る悩み
小陰唇が片側だけ腫れると、見た目の違和感や不安、下着との擦れによる不快感など、日常生活でさまざまな悩みが生じることがあります。主な悩みに以下が挙げられます。
- 患部が痛い、かゆい
- 排尿がしにくい
- 臭いが気になる
- 見た目でコンプレックスを感じる
- 黒ずみが気になる
それぞれ見ていきましょう。
患部が痛い、かゆい
小陰唇が腫れて大きくはみ出すと、ショーツや下着に触れることで痛みやかゆみなどの違和感を感じやすくなり、日常生活での不快感につながります。特に締め付けの強い下着やパンツスタイル、ナプキンの使用時などには擦れが生じやすく、炎症や赤みが悪化することもあります。
また、自転車やバイクなど跨って乗る乗り物では、陰部への圧迫が強くなり、より強い痛みを感じることもあります。タイトな服装を避け、通気性の良い衣類を選ぶなどの工夫が必要です。
排尿がしにくい
小陰唇が片側だけ大きいと、排尿時に尿が小陰唇に当たり、予想外の方向に飛び散ることがあります。左右非対称な形状は、尿が真っすぐ出にくくなる原因となり、トイレを汚さないように常に気を使う必要があります。
その結果、外出先でのトイレ使用時に緊張や不安を感じることがあり、ストレスの原因になることもあります。こうした排尿の悩みは、日常生活に小さくない影響を与えることがあります。
臭いが気になる
小陰唇が片側だけ大きいと、入浴時に洗い残しが生じたり、排尿後にしっかり拭ききれなかったりすることがあります。こうした洗い残しや拭き残しによって汚れが溜まりやすくなり、デリケートゾーンがにおいやすくなる原因になります。
また、汚れが長時間残ることで雑菌が繁殖しやすくなり、炎症やかゆみを引き起こすこともあります。これがさらににおいの悪化につながることがあり、衛生面での悩みや不快感を抱える原因になります。
見た目でコンプレックスを感じる
性行為や温泉などで小陰唇の左右差が気になると、人に見られることにストレスを感じることがあります。現在は気にならなくても、将来介護を受ける際の不安を抱く人も少なくありません。
また、周囲の目線を気にしてエステや脱毛、パーソナルジムなどに通うことに消極的になる場合もあります。小陰唇の大きさや形は個人差が大きく、多様であることを理解することが大切です。自分の体を受け入れ、無理なくケアを続けることが心身の健康につながります。
黒ずみが気になる
小陰唇が片側だけ腫れてはみ出すと、ショーツや下着との摩擦が増え、色素沈着が起こりやすくなります。その結果、黒ずみが生じ、見た目が気になることがあります。特に、はみ出す面積が広がるほど摩擦も強くなり、黒ずみがより目立ってしまうことがあります。
色素沈着は時間とともに悪化することもあるため、摩擦を避けるための衣服選びや保湿ケアが重要です。また、症状が気になる場合は専門医に相談することもおすすめです。
小陰唇の腫れを予防する方法
小陰唇の腫れを予防するためには、清潔を保ち、通気性の良い下着を選ぶことが大切です。また、過度な摩擦や圧迫を避け、バランスの良い生活習慣を心がけましょう。早めの対策でトラブルを防げます。
主な腫れを予防する方法は以下の通りです。
- 正しい方法で膣を洗浄する
- 清潔に陰部を保つ
- 無理な性行為はしない
- 市販薬を使う
- 小陰唇縮小の手術を受ける
それぞれ見ていきましょう。
正しい方法で膣を洗浄する
膣の正しい洗浄は、デリケートゾーン用の石鹸を使い、泡立てて優しく洗うことが基本です。特に大陰唇や小陰唇のヒダの間には汚れが溜まりやすいため、丁寧に洗いましょう。ただし、膣の内部を洗う必要はありません。
膣内には自浄作用を持つ常在菌が存在し、過剰に洗浄するとこれらの菌まで洗い流してしまい、かえって感染や炎症の原因になることがあります。適切な洗浄でデリケートゾーンを清潔に保つことが大切です。
清潔に陰部を保つ
不衛生な状態が続くと炎症の原因となるため、日頃からデリケートゾーンを清潔に保つことが大切です。排尿後は毎回トイレットペーパーで優しく尿を拭き取り、清潔にしましょう。
特に月経時やおりものが多いときは、ナプキンやおりものシートをこまめに交換し、湿った状態を避けることが重要です。これにより雑菌の繁殖を防ぎ、かゆみや臭い、炎症のリスクを減らせます。適切なケアを続けて、健康な状態を維持しましょう。
無理な性行為はしない
膣分泌物が十分に分泌されていない状態で性行為を行うと、小陰唇が擦れて炎症を起こすことがあります。無理に挿入すると小陰唇が巻き込まれ、痛みや腫れを引き起こすこともあるため注意が必要です。
膣の潤いが不足していると感じたら、無理をせずローションなどの潤滑剤を使うことがおすすめです。これにより摩擦を軽減し、体への負担を抑え、快適で安全な性行為をサポートします。
市販薬を使う
市販の薬を使うことで症状が改善する場合もありますが、原因や体質によって適した薬は異なります。そのため、自己判断で薬を選ぶ際は注意が必要です。症状が改善しない場合や悪化する場合は、早めに医師の診察を受けましょう。
医師は原因を正確に診断し、適切な処方薬や治療方法を提案してくれます。自己判断での治療は症状を悪化させることもあるため、専門家の意見を聞くことが大切です。
小陰唇縮小の手術を受ける
小陰唇縮小術は、余分な皮膚を切除して小陰唇を適切な大きさに整える手術です。これにより、摩擦や汚れの蓄積が減り、デリケートゾーンを清潔に保ちやすくなります。感染リスクも低下し、日常生活の快適さが向上するメリットがあります。
治療時間は片側で約15〜30分程度と比較的短時間です。ただし、リスクや副作用としては稀に感染や傷が開くことがあるため、術後のケアや医師の指示に従うことが重要です。
小陰唇が片方だけ腫れることに関してよくある質問

小陰唇が片側だけ腫れる症状に対し、不安や疑問を感じる方は少なくありません。原因や治療法、日常生活での注意点など、よくある質問とその回答をわかりやすく解説します。正しい知識で安心して対処しましょう。
質問は以下の通りです。
- 小陰唇が片方だけ腫れていますが痛くないのは大丈夫ですか?
- 小陰唇の腫れはどれくらいで治るものですか?
- 小陰唇が片方だけ腫れている場合に薬を使ってもいいですか?
それぞれ見ていきましょう。
小陰唇が片方だけ腫れていますが痛くないのは大丈夫ですか?
小陰唇が腫れたままの場合は、一度医師の診察を受けて放置してよいか判断してもらうことが大切です。
特にバルトリン腺炎などでは、膿が溜まっていても痛みを感じないことがあり、症状を見逃しやすいため注意が必要です。早めの診断と適切な治療で悪化を防ぎましょう。
小陰唇の腫れはどれくらいで治るものですか?
通常、小陰唇の腫れは1~2日で治まることが多いです。しかし治らない場合は、アトピー性皮膚炎や細菌性膣炎などの病気が隠れている可能性があります。
また、小陰唇縮小術などの手術を受けた場合は、術後1ヶ月ほど腫れが続くこともあります。症状が長引く場合は、早めに医師に相談しましょう。
小陰唇が片方だけ腫れている場合に薬を使ってもいいですか?
市販薬で対応できる場合もありますが、デリケートゾーンのかゆみや腫れに自己判断でステロイド外用剤を使うのは避けましょう。
症状が続く場合は、婦人科や皮膚科を受診し、適切な処方薬で治療することが大切です。専門医の診断を受けることで、正しい原因を突き止め、安全に改善を図れます。
まとめ
小陰唇が片方だけ腫れる原因は多岐にわたり、全身のむくみから妊娠時の血流変化、摩擦や炎症、感染症までさまざまです。腫れや痛み、かゆみなどの症状が続く場合は自己判断せず、早めに医師の診察を受けることが重要です。
日常生活では、デリケートゾーンを清潔に保ち、通気性の良い下着を選び、過度な摩擦や圧迫を避けることで予防が可能です。また、適切なケアや治療で快適な状態を維持しましょう。専門医の指導のもと、正しい対処を心がけることが大切です。